香川県条例素案に対して~他人の強制では自制心は育たない~

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2020年1月10日

香川県議会はスマホ等(パソコン、ゲーム)を規制するために、

18歳以下の子どもは、

1日当たりの使用時間に制限が設けられ

  • 平日…60分まで
  • 学校等の休業日…90分まで

とされ、

  • 義務教育修了前の子どもについては午後9時までに、
  • それ以外の子どもについては午後10時までに使用をやめる

というルールを遵守させるものとする。

との提案がなされ、物議を醸している。

 

もし学生時代に、友人がこれと同じ時間制限があると言ったら、相当厳しい家庭だと感じるのではないか。

 

実は上記の時間制限の前には以下のような文言がある。

保護者は、子どもにスマートフォン等を使用させるに当たっては、子どもの年齢、各家庭の実情等を考慮の上、その使用に伴う危険性及び過度の使用による弊害等について、子どもと話し合い、使用に関するルールづくり及びその見直しを行うものとする。

ここまでは良いのである。

というか、保護者と子どもで話し合ってルールを決めなさいと言っておいて、結局、時間制限を課しているというのが甚だおかしい。子どもや家庭の実情を考慮する気が全くないのである。

 

僕は、スマホやゲームの使用時間に関しては、当人の自主的な意思のもと家族と話し合って決めることが最も大切だと思っている。そして、それこそが将来を生きる力になるだろう。

どうして、今後、中毒性の高いサービスが増えることを想定しないのだろうか。

 

人は、いつでも、すぐに、楽に、快感が得られるものが好きで、

商業においては、日夜そのような商品を生み出そうと血のにじむ努力が行われている。それは、広告収入を目的としたブログや、動画配信者も同様で、いかに読者/視聴者をすぐに、簡単に、楽しませるかということをとことん追求している。

 

そうした流れの中で、将来的にスマホ以上に、快感をいつでも好きなだけ得られるようなデバイスやサービスが登場しても何らおかしくない。

そうなったときに、新たな商品が登場する度、行政が禁止をして、個人がその監視の目をかいくぐるという構図を作っていくつもりだろうか。

おそらく過度な規制によるストレスが人々に息苦しさを与え、その鬱憤へのはけ口として快楽を求めさせるのではないだろうか。

 

便利な商品が生みだされ、世の中に流通している以上、社会が作った”良くない”というイメージに囚われ、怯えて生きるのは可能性の幅を狭め自分の首を絞めはしないか。

本人が考えて、使う時間を決め、その結果、上手くいったり失敗したりしながら、トライ&エラーを繰り返して、適切な付き合い方を身に着けていくのである。

 

僕自身、幼少期から散々ゲームをしてきたが、だからこそ、無計画にやりすぎてしまったときの虚しさやその結果として、学校などで失敗した経験を身を以て味わった。

おかげで今では自制するのが得意だと感じている。

実際、学業の追い込みシーズンになればスパッとゲームを封印できたし、1年以上封印していたこともある。

最近では、スマホを購入し、その中毒性に驚かされたことが記憶に新しいが、過去にゲームで培った要領で簡単に中毒から抜け出せた。今では、職場で休憩時間ずっとスマホをいじっている同僚を横目に見ながら、有意義な時間を過ごせている。

大事なのは、スマホやゲームをしている時間ではなく、目的があって計画的に使っているかどうかだ。

 

暇だからスマホやゲームをするではなく、”やりたいこと”があるからやる。

そして、「その日、他にやるべきことがこれだけあるから、何時間までにしよう」と逆算して、スマホやゲームの時間を何時間くらいに収めるか考える。

そして決まった時間が5時間だろうと10時間だろうと、自分で決めた時間が守れて、勉強や家庭の決まりごとがちゃんとできているのなら問題ないのではないか。

 

もちろん、家族がアドバイスをする必要はあるので、本人の意思を尊重しながら家族と相談してルールを決めていくことが大切だ。そうして、家族で子どもが自分をコントロールする能力を育てていくのである。

 

また、計画通りに出来たという達成感が自己肯定感に繋がり、どこの誰かも知らない奴が決めた1時間などという謎の時間ではなく、自分で決めた時間の範囲でやりたいことをしっかりやり込むことで、将来仕事や人生に活きる集中力を身につけることができるのではないだろうか。


最後に本旨から若干外れるが、

2020年1月16日に掲載された『NHK NEWS WEB』の香川県条例素案に関する記事の中で

ゲームのし過ぎは “病気”

という小見出しがあったが、これはゲームをする人に対する誤った偏見を与えかねない暴言である。

ゲームのし過ぎは病気ではない

インターネットゲーム障害になるとゲームをやめられなくなるのだ

WHOは「インターネットゲーム障害」に関するQ&Aの中で、以下のように答えている

  1. 「ゲーム障害」と診断するための行動パターンは、個人、家族、社会、教育、職業または他の重要な機能分野において重大な障害をもたらすほど十分に重症でなければならず、通常12カ月間継続している。
  2. WHOが「ゲーム障害」を認定した目的は「ゲーム依存」の治療プログラムの開発やこの疾患の発症のリスクに対する医療従事者の関心を高めることにある。
  3. 『ゲームをする人すべてが「ゲーム障害」になることを懸念する必要があるか』という質問に対し、WHOは研究によるとゲームをする人のほんの一部にしか影響がないとしたうえで、ゲームをする人の肉体的、精神的、および社会生活への変化に注意を向ける必要があるとしている。

<参考>Gaming disorder Online Q&A

つまり、ゲーム障害に対する医療の発展と注意喚起を目的としており、「ゲーム好きは病気を疑え」という話ではないのである。

メディアはゲーム障害への恐怖を過大に煽り立てないよう注意しなければならない。