ゲーム批判に悩むゲームファンに読んで欲しい『NEWTON ゲーム思考』

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『ゲーム思考 コンピューターゲームで身につくソーシャル・スキル (ニュートン新書)』を

ゲームへの誹謗中傷に傷ついている
ゲームが趣味であることを後ろめたく思っている
ゲームは悪影響を与えるのではないかと不安を感じている

これらの悩みを持つゲームファンにおすすめします。

また、

ゲーム中毒の家族を持つ
子供にゲームをさせるべきか悩んでいる

という方にとっては、家族のゲームとの関わり方を考える参考になるでしょう。

著者アレクサンダー・クリス氏は幼い頃からゲームに親しんできたゲームファンです。臨床心理士として治療を行う中で患者の抱える問題にゲームがどのような役割を果たすかを目撃します。

文中には「サイレントヒル2」、「テトリス」など、みなさんよくご存知のゲームが登場し、心のアンテナが反応することも多いでしょう。

 

本書で僕が得られたものを紹介します。

ゲームの悪影響に関する真実

僕自身ブログでゲームを遊ぶことで“頭が悪くなる”、”暴力的になる”などの悪影響があるのかどうか論文などを調べて、記事にまとめたことがありました。

その結論としては、概ね悪影響はない。ただし、悪影響がないとする論文もあれば、あるとする論文もあり、どちらが正解か判断するのは難しいというひっかかりがありました。

 

本書では、ゲームの研究が行われ始めたきっかけが説明されています。

アメリカでは大量殺人などを背景として、それらの反社会的行動の原因をゲームに見出そうと、ゲームは有害であることを証明するための研究が推し進められたということです。

 

問題はゲームが有害という結論ありきで、研究の手法や解釈が誤っているにも関わらず、それらを科学的信憑性のあるものとして論文掲載したこと。さらには、ゲームの有害性を前提とした研究に絞り研究への資金援助を行うという、科学の公正性を欠いた動きがありました。

ですから、論文を探せばゲームは悪影響があるという論文が出てきます。ただし、現在では誤った研究を批判し、ゲームの悪影響を否定する論文も出てきています。

幸い、僕がゲームに悪影響がないとして持ち出した論文は、本書でも引用された研究者によるもので、たしかに悪影響はなかったのだとホッとしました。

 

くわえて、社会がゲームを悪とみなした心理的な地盤として、親がゲームをする子供に対して抱いていた危機感を挙げています。

「ゲームが子供の思考を暴力的にし、現実で問題行動を起こさせているのではないか」というものです。

そうして親は子供の教育における能力不足を棚上げして、子供の問題行動をゲームのせいにしてしまえば楽というわけです。

 

「ゲームばっかりしてるから勉強ができない」「ゲームばっかりしてるから夢と現実の区別がつかなくなって友達に暴力を振るってしまう」

 

僕自身、子供時代からゲームで遊んできた中でこれらの当てつけを嫌というほど聞いてきました。みなさんも身に覚えがあるのではないでしょうか。

こうした親たちの責任転嫁によりうまれたゲーム批判が濡れ衣だとわかりました。

 

本書でも著者自身ゲームが趣味であることに羞恥心を抱いていたことや、著者が担当した治療にて”ゲームが自分をおかしくするのではないか”という不安を抱く患者のエピソードから、世間のゲーム批判が呪いのようにゲームファンを苦しめ続けていることがわかります。

本書はゲーム批判の呪いに苦しんできた方々にとって大きな救いになるでしょう。

 

ですが、本書から得られるものはそれだけではありません。

ゲームの持つ意味

本書の意義深いところは、ゲームのポジティブな側面を明らかにしている点です。

僕は本書からゲームの持つ意味を知り、ゲームには大きな可能性があると感じました。

 

治療の実例から、ゲームがプレイヤーにとって、時には心が健康であるために必要なものであり、時には空想ではない実体験として人生を豊かにする可能性を秘めていることが示されています。

 

患者とゲームとの関わりから無意識下の欲求や恐怖を見いだす過程は、目を見張るものがありました。

 

ゲームの表現の幅が広がり、ゲームの中で現実のような社会性が築かれるようになるなど目覚ましい進歩を遂げている現在は、より自分らしさを反映できる時代になったと言えるでしょう。

著者はゲームの持つ意味として「ゲームと向き合い、自分を理解する」ことの大切さを述べています。

 

「自分がゲームに反映している自分らしさは何か」
「なぜ自分はそのゲームを遊ぶのか」
「そのゲームから得られるものは自分の生い立ちとどう関係しているのか」

を問うことで、気づかずにいた自分を発見し、見える世界が変わってくるでしょう。

 

僕は著者の言葉にゲームの持つ意味を教わり、読書でありがちな「勉強になりました(ふーん)」では決してなく「そうだったのか!」とパズルのピースが埋まる思いをしました。

それは、僕は4年間のゲームブログ活動を通して、

「ゲームが楽しくない」、「ゲームが趣味である自分が好きじゃない」という悩みの原因は、ゲーム自体がつまらないからでもゲーム批判のせいでもなく自分自身にあるのではないか

と思うようになったからです。

 

本書を読み終わり自分がなぜゲームを遊んできたのか考えたときに、家族の事情や自分の性格的な特性、さらには自分の境遇をゲームに責任転嫁した根本のところも見えてきました。

これは、これからゲームを遊んで行く中で、なんとなくではなく自分らしくゲームと付き合っていく道筋になるでしょう。

 

ゲームファンはゲームとの対話を通して、自分自身の喜びや悩みを知ることが大切なのではないでしょうか。

付記

当ブログでは、ゲームが趣味であることに自信を持てない方々の役に立てればと、ゲームとどのように向き合えば良いのかを悩み克服記事として書いてきました。

 

しかし、本書を読めば僕のブログを一切読む必要がないほどです。

読んで欲しいけど

僕の記事から得られるすべての示唆、すべての学びを上回る質量が本書には込められています。

 

表紙には実用書のような売り文句が並んでいますが、

「ゲームでコミュニケーション能力を高められる理由は、これです!だから、みなさんこうしてください!」

という、”役に立つ情報をご紹介”という趣旨の本ではありません。

買ったときは実用書かと思いましたが、開いてみたら違いました(良い意味で)

 

本書で得られるものは、実用的な知識を超えた本質的な気づきです。

著者の臨床心理士としての人間心理の洞察、ゲームファンとしての高い見識をお楽しみください!


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【ゲームの悪影響についての調査2】

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