ゲームが人に与える影響【論文等】~ChatGPTで調べてみた~

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ゲーム論文調査~第4弾~

ゲームは悪影響があるのか?という疑問についてこれまで論文を調査してきましたが、今回、近年話題のAI(ChatGPT)を使ってゲームが人に与えるさまざまな影響について再調査しました!!

これを読めば2025年時点のゲーム論文の概況が分かります!

方法

  • 使用したAI:ChatGPT-3.5(無料版)(OpenAI製)
  • AIへの質問:↓の吹き出しの通りに入力しました。
ビデオゲームの論文を探しています。
主に以下の観点について
・学力への影響
・脳への影響
・心理的影響
・暴力暴露の影響
・依存
権威のあるジャーナル、メタ分析、比較的新しいものがあればなお好ましいです。
  • ポイント
  1. ターゲットを具体的に指定することは大事です。今回は、ゲームの悪影響として研究テーマになっていることが多い5つのテーマを指定しました。
  2. 権威のあるジャーナル(学術誌)とした理由は、本と同じように論文にも質の高いものとそうでないものがあり、素人ではその判断が付きません。権威のあるジャーナルほど、厳しいチェックを通過した科学的価値および信憑性が高い論文が載っているはず(という先入観に基づいています)。言ってみれば、買い物をするとき有名なブランドの方が安心感があるのと同じですね。
  3. メタ分析とした理由ですが、まずメタ分析とは研究テーマが共通した複数の研究結果をまとめて分析することです。例えば、共通のテーマの研究でも結果が一致することもあれば異なることもあります。そうした場合に「結局何が正しいの?」と解釈に困ることがありますが、メタ分析では多数の研究結果に基づいているので個々の研究結果の違いに左右されにくいというメリットがあります。
  4. 新しいというのは、新しい研究は過去の研究結果を踏まえている(はず)なので、より有意義な研究をしているはずです。また、ゲームはプラットフォームもソフトも入れ替わりが激しいので、新しい研究の方が時代の状況を反映できていると思います。

といっても、これらは素人の判断ですが

結果

ほぼChatGPTの出力した原文のままです。なんと、絵文字も勝手につけてくれました

📘 学力への影響

ビデオゲームと学業成績の関係*1
国際的な調査(PISA)のデータを再分析した研究では、ビデオゲームの使用頻度と科学、数学、読解の成績との間に有意な関連は見られませんでした。

オンラインゲームと学力向上*2
オーストラリアの研究では、定期的にオンラインゲームをプレイする15歳の生徒が、数学と科学で高得点を獲得する傾向があることが示されました。

🧠 脳への影響

高齢者における認知機能への影響*3
27の介入研究を対象としたメタ分析では、ビデオゲームが高齢者の記憶更新機能に小さいながらも有意な効果をもたらすことが示されました。

認知機能の向上  論文ではありません(2025年現在査読付き出版を準備中)
カナダの研究では、週に5時間以上ビデオゲームをプレイする人々が、注意力、処理速度、問題解決能力において、平均で13.7歳若い人々と同等の認知能力を示すことが明らかになりました。

🧠 心理的影響

社会的行動への影響*4
98の研究を対象としたメタ分析では、暴力的なビデオゲームが攻撃性を高め、利他的行動を減少させる一方で、利他的なビデオゲームはその逆の効果を持つことが示されました。

🔫 暴力暴露の影響

攻撃性との関連*5
暴力的なビデオゲームへの曝露が攻撃的な行動、思考、感情の増加と関連していることが示されましたが、犯罪行動との直接的な因果関係は確認されていません。

🎮 依存

ゲーム依存症の有病率*6
世界17カ国、226,247人を対象としたメタ分析では、ゲーム依存症の世界的な有病率は3.05%と報告されています。

青少年におけるゲーム障害の負担*7
青少年を対象としたメタ分析では、ゲーム障害の有病率が8.6%と高く、社会的孤立、学業成績の低下、不安や抑うつなどの心理的問題と関連していることが示されました。

依存症状と動機の関連*8
49の研究を対象としたメタ分析では、感情的な逃避を目的としたゲームプレイが、ゲーム依存症状と強く関連していることが明らかになりました。

ChatGPTを使ってみた感想

ChatGPTのここが凄い!

検索の早さ

まずこれ!

論文調べるのってめちゃくちゃ時間がかかるんですよ。そもそも欲しい論文が見つからない!

英語の論文を調べるので英語で検索して、翻訳して読んでって言うのをひたすら繰り返す。しかも「こういう情報が欲しかった!」っていう論文がなかなか見つからないんですよね。だから、くじ引きの箱に手を突っ込んで探るような感覚です。

それが、あっと言う間に目当ての論文を見つけてくるんですから、しかも一度に複数の論文をですよ。

もしかすると10時間ぐらいの短縮になるのではないでしょうか?!

翻訳不要

ChatGPTでは英語の論文の要点を抜粋して勝手に日本語に翻訳して出力してくれるので、翻訳の必要がありません!

要約力

論文を見つけて翻訳してくれるだけでなく、論文の内容を2行ぐらいの短文で簡潔にまとめてくれています

重要な情報が抜けてやしないか心配になりますが、こんな短文で要約する文章力が自分にはないので感心します。

記事を作る側としては、まとめる手間が省けて大助かり(笑)

ChatGPTのここはイマイチ

 論文すり替わり事件

ChatGPTは本記事に書いた通りに回答したわけですが、

「ご希望があれば、これらの研究の詳細な要約や、日本語での論文検索方法についてもご案内いたします。」

と親切に言ってきました。ということで詳細を求めたところ、「あれっ?」と思うことが。

例えば、ビデオゲームと学業成績の関係に関する論文では

<短文>

国際的な調査(PISA)のデータを再分析した研究では、ビデオゲームの使用頻度と科学、数学、読解の成績との間に有意な関連は見られませんでした。

と書かれていたわけですが、詳細な要約では次のような回答が出てきました。

<詳細>

OECDのPISAデータを基に、15歳の学生約180,000人を対象に、インターネット(含むオンラインゲーム)の利用と学力(数学・科学・読解)の関係を分析した。
結果、1日30分〜1時間程度のオンラインゲームは学業に悪影響を及ぼさず、適度なゲームプレイはむしろストレス解消や認知刺激に貢献する可能性があると指摘。
ただし長時間(3時間以上)の使用は学業成績の低下と関連。ゲーム内容や学習とのバランスが重要。

ここで短文と詳細で「言ってることが違う!」と思ったのですが、

よくよく確認してみると、短文と詳細で元となっている論文が変わっていました。

他の論文は短文と詳細で文献が同じでしたが、質問していくうちに情報がすり替わっていないか気をつける必要がありそうですね。

 出典元が論文じゃない

今回、ChatGPTに論文を探すように指示したはずですが、”オンラインゲームと学力向上””認知機能の向上”、”攻撃性との関連”の3つに関しては論文ではなく研究結果を記事にしたニュース・要約系サイトを出典元にしていました。

だから、一次情報は論文だけど出典元が二次情報という点が気がかりです。

論文って指示してるのに論文じゃないものを出典にしてるなら言ってよという感じです

ChatGPTが書いていることが論文ではなくニュースサイトの記事を引用している可能性があるので、一次情報の論文を確認して正しい情報を持ってきているか確認が必要でしょう

論文(一次情報)が見つからない

先ほどの出典元が論文じゃないもののうち”認知機能の向上”、”攻撃性との関連”についてはChatGPTに表示されたURLにアクセスしてもリンクが切れており、元をたどることができません。

リンクが切れている時点で怪しさ満点

ChatGPTに「リンクが切れているので一次情報の論文が知りたい」と入力したところ、”攻撃性との関連”については論文を見つけてきました。

しかし、”認知機能の向上”については、本当に論文じゃないという衝撃の回答(下)をしてきました!

この研究に関する一次情報の論文や公式な発表は、現在のところ確認できませんでした。以前ご紹介した情報は、カナダのConcordia大学の研究者による発表内容に基づくものであり、学術誌に掲載された査読付き論文ではありません。そのため、詳細な研究デザインや結果の検証が難しい状況です。

おいおい。

ただし、現在査読付き出版を準備中と書いてあったので、もし論文が掲載されればまぁ許されるかも知れませんけど、現段階で掲載されているものから探してきてよと思ってしまいます。

ChatGPTに論文検索の詳細について聞いてみた

・ChatGPTが探してきた論文は無料公開されたものだけ?
・探してきた論文が対象の研究テーマを本当に代表するものなのか怪しい。
・前述のような問題点がある。

ということでChatGPT自身に「論文検索の特徴、精度、妥当性、注意点など」を聞いてみました。

以下はChatGPTの出力した内容を軽度な装飾の変更以外はそのまま引用しています。

✅ 1. 検索範囲について

● 無料論文だけなのか?

いいえ、限定されません。
ChatGPT(とそのWebツール)は、論文の要約・メタデータ(タイトル、著者、雑誌名、発行年、PMID/DOIなど)にアクセスすることができ、次のようなソースを横断的に活用します:

ソース 対象 備考
PubMed / NCBI 医学・心理・脳科学 信頼性高、抄録は無料で閲覧可
PMC (PubMed Central) フルテキストが無料の論文のみ 主に米国政府助成の研究
Google Scholar 学術全般 検索範囲が広いが、有料論文も多数
ResearchGate 一部のPDF閲覧可 著者が自主的に投稿する形式
学術ジャーナル公式サイト Nature, Science, APA等 多くが有料。要約や引用情報は無料
ニュース・要約系サイト WIRED, APA News, VeryWell等 専門家監修の記事が多いが精査は必要

したがって、無料公開論文「だけ」には限定されませんが、実際にフルテキストを読めるかは論文ごとに異なります。

✅ 2. 各テーマで挙げた論文の妥当性について

ChatGPTが代表例として選ぶ論文は:

  • 査読付き学術誌に掲載されているか(例:Psychological Bulletin, Addictive Behaviors, Computers & Educationなど)

  • メタ分析系統的レビューのようなエビデンスレベルの高い研究か

  • 引用数や掲載ジャーナルの**インパクトファクター(IF)**を踏まえた妥当性があるか

という基準で選定しています。

🔎 ただし、以下の点にはご注意ください:

  • ChatGPTが提示する論文は代表例であり、「その分野で唯一の最上位研究」とは限りません。

  • 最新の論文(1年以内)については、まだ広く認知されていない場合があるため、引用数などが少なく「仮説段階」であることもあります。

⚠️ 3. その他注意事項

❗ A. ChatGPT自身は全文閲覧ができない(※)

ChatGPTは有料ジャーナルの全文に直接アクセスすることはできません
要約やメタデータ、研究の目的・結果などを基に解説しています。フルテキストを読む場合は、次のような方法をおすすめします:

  • PubMed Central(PMC)などの無料アーカイブ

  • 大学図書館(学術DB契約あり)

  • 著者のResearchGate投稿

  • Sci-Hub(※非合法なので推奨しません)

❗ B. 引用情報は正確だがURLの可用性は変動する

論文のPMIDやDOIは正確に記載しますが、リンク先のページが後に移動・削除されることがあります。

❗ C. ChatGPTが要約した内容は二次情報

ChatGPTが提供する論文の要約や解説は、あくまで機械による要約であり、一次情報(論文本文)に完全に代わるものではありません。特に以下の用途では一次情報の確認が重要です:

  • 学術論文の執筆

  • レビューや引用

  • 医療・心理・教育に関する意思決定


↓ここから自筆↓

【要点】

・有料の論文については情報量が乏しい
・二次情報を拾ってくる可能性がある
・ChatGPTの要約を信じすぎるな

ということですね。

まとめ

ゲームの研究についての感想ですが、学業への影響だけでなく、脳への影響や心理的な影響においても想像していた以上に肯定的な面があることが分かりました。

心理的な影響や暴力暴露の影響については遊ぶゲームの内容によるというのは、松永伸司『ビデオゲームの美学』で語られているように、結局はテレビなどのメディアと同様、フィクションの選択による問題ということを示しているわけで腑に落ちる結果でした。

暴力的なフィクションにさらされて一時的に攻撃的な思考や感情が増加するからといって、それが人格や倫理観を変えるかと言えば疑問ですよね。仮に人格を歪めるとすれば暴力が含まれるテレビ番組や映画をたくさん見てきた僕たちは犯罪者だらけになって然るべきです。

ゲーム依存について僕個人の意見としてはなんらかの理由で現実社会から逃避したくなった人たちからゲームという逃げ場所を奪うのは本当に良いことなのか、逃避したくなる原因をなんとかすべきではないかと常々考えています。

僕がなぜこういった論文を調べ続けているかと言うと、ゲームがずっと悪者扱いされていることがあります。今回の調査結果からはゲーム批判をおおむね否定できそうですが、論文=正解ではないことには注意が必要です。

それに、最近僕が悩んでいる点で言えば、例えば現実逃避でゲームばかりした結果その人の時間やチャンスが奪われるといった、ゲームが直接的な害でなくとも間接的な害として働いているケースが社会問題として取り上げられていることです。

そのような問題をどう捉えるべきか悩ましいですが、可能な限り確かな視点を持ちたいというのが論文を調べるもう一つの理由です。

 

そして今回、ChatGPTで論文調査をしてみて、その早さと気の利いた(?)要約や提案には感動しました。

ただし、一見完璧な回答を返してきたように見えても、よくよく確認してみると、論文じゃなかったり、ソースを正確に示していなかったり、質問するうちに情報がすり替わっていたりとお茶目(?)なところもありました。

現在ChatGPTやGeminiのようなAIを誰でも無料で使えるようになりました(有料版もあり)。

今後、自分たちがAIを使う場面では、AIがちゃんと質問通りの回答をしているか、本当のことを言っているかを確認する必要があるでしょう。

また、Web上にAIで書いたこたつ記事が増えるでしょうから(だって楽ですもの)、僕達はAIが書いている可能性を踏まえて読む心構えがリテラシーとして重要ですね。

 

それでは、みなさん良いゲームライフを


【参考文献】

1. BÄCKLUND, Christian, et al. Gaming motivations and gaming disorder symptoms: A systematic review and meta-analysis. Journal of behavioral addictions, 2022, 11.3: 667-688.

2. Alberto Posso. Online video game play and academic achievement among 15-year-old students in Australia. International Journal of Communication, 2016, 10: 3851–3876.

3. MANSOR, Nor Shuhada; CHOW, Chin Moi; HALAKI, Mark. Cognitive effects of video games in older adults and their moderators: a systematic review with meta-analysis and meta-regression. Aging & mental health, 2020, 24.6: 841-856.

4. GREITEMEYER, Tobias; MÜGGE, Dirk O. Video games do affect social outcomes: A meta-analytic review of the effects of violent and prosocial video game play. Personality and social psychology bulletin, 2014, 40.5: 578-589.

5. ANDERSON, Craig A., et al. Violent video game effects on aggression, empathy, and prosocial behavior in eastern and western countries: a meta-analytic review. Psychological bulletin, 2010, 136.2: 151.

6. STEVENS, Matthew WR, et al. Global prevalence of gaming disorder: A systematic review and meta-analysis. Australian & New Zealand Journal of Psychiatry, 2021, 55.6: 553-568.

7. SATAPATHY, Prakasini, et al. Burden of gaming disorder among adolescents: A systemic review and meta-analysis. Public Health in Practice, 2024, 100565.

8. BÄCKLUND, Christian, et al. Gaming motivations and gaming disorder symptoms: A systematic review and meta-analysis. Journal of behavioral addictions, 2022, 11.3: 667-688.


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