【鬼トレ】鬼計算10バック達成報告~鬼トレの効果は?~

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2020年から1年間、当ブログで『ものすごく脳を鍛える5分間の鬼トレーニング(鬼トレ)』とエアロバイクによる有酸素運動を毎日やって、脳と体を鍛えるというチャレンジを行いました。

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1年間の継続を達成し、そこで辞めても良かったのですが、「せっかくここまでやってきたんだからともっと上を目指してみよう!」と、チャレンジ終了後もトレーニングを続けていました。

チャレンジ終了後から1年、なんと鬼トレの難関課題“鬼計算の10バック”をクリアしたので報告します!

達成したのは、鬼トレを始めてから2年4ヶ月後です。

鬼トレの10バックは、ゲーム発売後2ヶ月時点で行われた集計*で、たった1.5%しかいなかった超人の領域です。

*鬼計算 トレーニングデータ解析レポート

かつて3バックですらヘロヘロだったワーキングメモリーなし男が、10バックを達成できたときにはガッツポーズで家中を練り歩きました。

喜びと同時にふと湧いてきたのは、10バックを達成できたのならワーキングメモリーがどえらいことになっているのでは?という疑問。

そこで、鬼トレの目的だったワーキングメモリーの強化やゲームの上達への効果はどうだったのかというところを検証してみたのでご紹介します!

鬼トレ&ゲームスコア

鬼トレ

鬼トレのうち鬼計算以外の種目と集中時間測定(難しい版)に挑戦し、鬼計算でワーキングメモリーが鍛えられたのかを調べてみました。

赤字:プレイ前に比べてレベルが上がったもの、青字:〃下がったもの

【鬼トレ】

種目 開始時レベル 終了時レベル
(アップ/維持/ダウン)
レベル変化量 自己最高記録
鬼めくり 17 18(維持) 1アップ 17
鬼ネズミ 7 6(ダウン) 2ダウン 7
鬼朗読 7 8(維持) 1アップ 8
鬼記号 7 7(維持) 変化なし 8
鬼ブロック 8 6(ダウン) 3ダウン 9
鬼カップ 速い7 速い6(ダウン) 3ダウン 8
鬼耳算 速い4 4(維持) 1ダウン 5

【集中時間測定】

記録 最高記録
3分34秒 4分1秒

【考察】

記録の上がったものが2つに対し、下がったものが5つでした。もし、ワーキングメモリーが鍛えられたとしたら、もっと記録が上がる種目が多いのではないでしょうか。

なので、鬼計算で鍛えられたのはワーキングメモリーではなく、結局のところ鬼計算をプレイするスキルなのかなーと感じます。

とは言え、こんな結論じゃ悔しいじゃありませんか!

 

結果をドーピングしたいと思います。

鬼計算10バック達成のために、約7ヶ月ほぼ鬼計算だけをプレイしていたので、他の種目は長いもので約1年くらいプレイしていなかったものもあります。

そのブランクを考えると、レベルダウンしていたのも仕方ない。

これを踏まえた上で種目を分類したときに、Nバック系の鬼朗読、鬼記号、鬼耳算、集中時間測定はレベルにほとんど変化がありませんでした。集中時間測定も最高記録まではいきませんでしたが、過去の記録からみると3分超えというのは好記録です。

それに比べ、画面記憶系の鬼めくり、鬼ネズミ、鬼ブロック、鬼カップはダウンした種目もレベルも多いと言えます。

というわけで、鬼計算はワーキングメモリーを鍛えたかと言えば怪しいけれど、Nバック課題を処理する能力を鍛える効果はあったと言えるのではないでしょうか

ゲームスコア

鬼トレチャレンジのときに、鬼トレでワーキングメモリーを鍛えることでゲームが上手くなるかどうかを調べました。

ソフトは、こちらの2つ。

  • 音ゲー:『シアトリズム ファイナルファンタジー カーテンコール(以下、シアトリズムFF)』
  • ゲームinゲームの横スクロールアクション:『ゲームセンターCX 有野の挑戦状2(以下、有野)』

チャレンジの際は週一でテストしていました。

ということで、今回もこの2作をプレイ。

【結果】

ソフト 記録(点) ランク 自己最高記録 自己最高ランク
シアトリズム 8871913 S 9466891 SS
有野 72440 常務 76810 専務

【考察】

「点数見ただけじゃわからん!」

ということで、「脳トレ×運動チャレンジ」後半の平均スコアを見てみると、シアトリズムは約8600000点。有野は約50000点

両作品ともチャレンジが終了してからプレイしていないことも加味すると、チャレンジ後半の平均スコアを超えているということはなかなか悪くない結果と言えます。

しかも、有野は過去3位の記録なので、結果は上々!

じゃあこの結果は脳トレのおかげかというと、正直なんとも言えないんですよね。

一言で言えば、ゲームのプレイ中に脳トレ感を感じなかったので、脳トレが役に立っていないと考えました。

チャレンジの1年報告でも、脳トレの効果はなかったと結論付けました。

シアトリズムは音ゲーですが、鬼トレで画面記憶系の種目の成績が悪かったことを考えると、シアトリズムも同様に効果がないのだろうと思います。

有野についてはプレイ中に思ったことがあって、「最近ストリートファイターV(格ゲー)をやっているせいか反応しやすいな」と感じました。好成績ではあったものの、脳トレの効果ではなくストリートファイターの効果っぽい(笑)

脳トレでゲームの上達は難しいかも知れませんね。

鬼トレは効果があるのか?本などを読んで考えたこと

鬼トレとゲームスコアからは、鬼トレの効果は限定的で同じ種類のワーキングメモリーにしか効果がなさそう、また、ゲームの上達効果はなさそうでした。

ところで、「肝心の実生活での脳トレの効果は?」と気になるところですよね。

脳トレ×運動チャレンジの1年報告では、短期的な記憶力や思い出す力がちょっとだけ上がったと書きました。

その後、さらに1年以上続けていたわけで、能力がグーンと上がったのでは?と思われるかも知れません。

しかし、正直なところ、あまり変化は感じないかなというところです。

本当はワーキングメモリーを調べる検査をしたいなーと思っていたのですが、テストが一般には公開されていないことや、病院で受けようと思うと知能障害などの診断目的に使われるということで健常者が興味本位で受けるものではなさそうだったので諦めました。

短期的な記憶力や思い出す力の上昇について、嘘とは言いませんが、ちょっとネガティブな見方をすると「普段から脳トレをやっていることで、”覚える”ことに意識的になり、記憶力が上がったのでは?」と考えることもできます。

なので、脳自体が鍛えられたから記憶力が上がったのかは怪しいかも知れません。

 

「うーん、この記事全体でやけにネガティブな評価をするなー」と思われる方がいらっしゃるところでしょう。

というのも、最近読んだ本『ULTRA LEARNING 超・自習法 どんなスキルでも最速で習得できる9つのメソッド』に印象深かいことが書かれていました。

この本では、何かを学習するには、間接的にそれを学習するより直接学習する方が良いと書かれています。

例えば、試験勉強では、教科書を読むより試験の過去問を解いた方が良いとしています。要は、より実際に近い状況で学んだ方が良いということですね。

著者はこれに関連して、教育論の迷信を批判しています*。

*批判の論拠として1901年の論文*1を引用しています。

その迷信とは“脳は筋肉のようなものであり、鍛えれば全体的な学力を向上できる”というものです。これを聞いてハッとしたのが、僕自身「脳トレ×運動チャレンジ」で、鬼トレと有酸素運動で脳をバキバキに鍛える!という意気込みを書いていました。

この考え方は、時代によって手を変え品を変え存在し続けているそうです。”ラテン語を学べば”、”批判的思考を鍛えれば”、”プログラミングを学べば”、脳が鍛えられ記憶力・注意力・推論力などあらゆる能力が高まると信じられてきました。

その一例として、脳トレも挙げられていました。

だから、脳トレをして記憶力そのものを高めようとしたり、ゲームを上手くなろうという考え方がまさに間接的なアプローチなので、そりゃ効果が薄いねと納得したわけです。

 

本記事を読んだ脳トレプレイヤーの皆さんは、この考えが面白くないでしょう。僕も「ずっと続けてきたのに無駄だったのか」と少し残念な気がしました。

それでも、脳トレは脳を鍛える効果がないとは思いません。

脳の健康について書かれた書籍『ブレイン・ルール 健康な脳が最強の資産である』では脳トレの効果が取り上げられています。

具体的には、処理速度ゲームを行うと、10年後に認知症になる確率が48%下がることが明らかにされています。

本書では、脳トレには効果がある脳トレとない脳トレがあるという前置きで、

  • 大半の脳トレは、ゲームをする技能のみ向上する
  • 上手く設計された脳トレは、認知機能が向上する

と書かれています。

事実、2010にNature誌で、脳トレゲームは効果がないとする研究*2が報告されています。

「え?じゃあ、川島隆太教授の脳トレシリーズはどっちなの?」というのが気になりますよね。

これについて、川島教授自身が行った研究*3で効果が示されています。

この研究は、Nature誌の論文で検証された脳トレゲームは効果がなかったかも知れないが、川島教授の脳トレゲームも効果がないとは言えないという考えのもと行われました。

[研究の方法]
4週間の期間中、健常な高齢者を『脳を鍛える大人のDSトレーニング(以下、脳トレ)』をするグループと『テトリス』をするグループに分け、研究調査前後の認知機能を比較する
[結果]
脳トレをしたグループはテトリスをしたグループに比べて実行機能(FAB、TMT)と処理速度(DST、SS)が向上した

その結果、すべての脳機能に効果があるわけではないとしながらも、特定の認知機能は向上することを証明しました。

ここで言っている実行機能(FAB、TMT)は、それぞれ次のような機能に関わりがあるとされています。


FAB:前頭葉機能

類似性の理解(概念化能力)、語の流暢性(思考の柔軟性)、運動系列(運動のプログラミング)、葛藤指示(干渉刺激に対する敏感さ,two ─ one tapping 課題)、Go/No ─ Go 課題(抑制コントロール)、把握行動(環境に対する被影響性)

出典:佐藤 正之『前頭葉の機能解剖と神経心理検査 : 脳賦活化実験の結果から』

TMT

視覚情報を見失うことなく検索、スキャン、処理できる速度、ある思考プロセスから別の思考プロセスへ素早く移行する能力

出典:『株式会社 STROKE LAB:https://www.stroke-lab.com/speciality/17559


これらの脳機能とワーキングメモリーのつながりが気になるところですが、FABもワーキングメモリーも前頭葉の機能を表しているので、脳トレで前頭葉の機能が向上するならワーキングメモリーも向上するとしてもおかしくありません。

ただ、ある検査をして脳の特定の機能を測ったとき、実際に調べられているのはその検査の問題を解く能力であって、「本当にその機能は前頭葉が制御しているのか」や「その検査で分かるとされている能力(実行機能)があらゆる作業における実行機能を表しているのか」は疑問の余地があります。

『ULTRA LEARNING』の著者が警告するように、じゃあ脳トレをすれば前頭葉が鍛えられて上に書かれた能力が全部鍛えられると考えるのは、少々短絡的かも知れません。

僕の考えでは、鬼トレでワーキングメモリーを鍛えられないというより、鬼トレで鍛えられるのはワーキングメモリーの機能のうちの“その種目(例えば、鬼計算)を処理する能力だけ”なのではないかと考えています。

なので、鬼トレをすることで、あらゆる作業に対しての記憶力(総合的なワーキングメモリーとでも言いましょうか)を鍛えることはできないのでしょう。

 

僕が脳トレを2年以上続けて大きな変化を感じなかったのは、僕が鍛えたかった「仕事中にマルチタスクを行う能力」が、鬼トレのような間接的な学習ではあまり鍛えられなかったからだと思います。

だから、マルチタスク能力を鍛えたいなら、鬼トレじゃなくてマルチタスクの仕事をして直接的に鍛えるのが結局のところ一番速いということでしょう。

集中力(注意力)とワーキングメモリの関係性が解説された書籍『最新の脳科学と心理学で高まる 集中力の科学 (ニュートン新書)』では、認知機能トレーニングを行った群と行わなかった群を比較したところ注意力が改善しなかったという実験結果をうけて次のように述べています。

❝勉強や仕事に関連した集中力*を高めるには、ただ単に勉強や仕事をするしかない。❞


この際、鬼トレに効果がないならやめようかなとも思いましたが、『ブレイン・ルール』によれば認知症を防ぐ効果があるとのこと。

仕事やゲームに役立てることはあまり期待せずに、脳の健康維持として続けていく分には、人生100年時代にやる意義も大きいのではないでしょうか。

30代になり記憶力が落ち、体力も落ち、早くも老化の前奏曲が流れ始めている今日このごろ。

現在、運動も継続しているので、鬼トレと運動をこれからも続けていき、頭と体をいつまでも若く保ちたいというのが今後の目標です。

 

そして、死ぬまでゲームライフをエンジョイするぞー!


【参考文献】
1.Woodworth, Robert S., and E. L. Thorndike. “The influence of improvement in one mental function upon the efficiency of other functions.(I).” Psychological review 8.3 (1901): 247.

2.Owen, A. M., Hampshire, A., Grahn, J. A., Stenton, R., Dajani, S., Burns, A. S., … & Ballard, C. G. (2010). Putting brain training to the test. Nature, 465(7299), 775-778.

3.野内類, & 川島隆太. (2014). 脳トレゲームは認知機能を向上させることができるのか?. 高次脳機能研究 (旧 失語症研究)34(3), 335-341.

【参考書籍】

スコット・H・ヤング『ULTRA LEARNING 超・自習法 どんなスキルでも最速で習得できる9つのメソッド』

ジョン メディナ『ブレイン・ルール 健康な脳が最強の資産である』

ステファン・ファン・デル・スティッヘル『最新の脳科学と心理学で高まる 集中力の科学 (ニュートン新書)』


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